労災保険からは支払われない損害分
労働者が仕事に関わる事故で受けた損害を企業は補償しなければいけません。労災保険はその損害を企業に代わって6割分支払うというものです。労災保険は一般的な民間保険とは違い、労働者がお金を支払って保障を受けるというものではなく、企業が保険料を支払って労働者に生じた損害を肩代わりしてもらうための保険なのです。
労災保険によって補償を受けられるのは、事故で被った損害の6割です。治療費は10割支給を受けられるのですが、慰謝料や休業中の補償されない賃金などを含めた残りの4割は労災保険からは支払われません。したがって、残りの4割も受け取りたいと考えるならば企業側と交渉をして支払ってもらうことになります。
話し合いがまとまらなければもちろん裁判に訴えることもできます。ただし、事故による損害が仕事と関連があるということを労働者側が証明しなければなりません。労災保険は労働者に迅速な補償を与えるため、完全な立証の必要なく補償給付を行っています。補償給付がおりているからといって、損害と事故との関連性が無条件で証明されているわけではないことには注意が必要です。
労災保険による補償給付の受け取りと裁判はまったく関係がないので、給付を受けたからといって後から交渉をしたり、裁判をしたりできなくなるということはありません。給付の対象とならなかった残り4割の請求分は別に残っており、いくらでも請求することができるので安心して労災保険の給付を受け取ってください。